人の目を気にしすぎる原因は?社交不安障害の症状や治療法について解説

人前に立つのが苦手で、過度に人の目を気にしてしまうことはありませんか。
極端に人前で話すことが苦手で、そのような状況を避け、動悸やめまいなど身体にも症状が現れている場合、社交不安障害という病気が関係している可能性があります。
社交不安障害は、人前に立つと極端に恐怖や不安を感じてしまう病気で、若いうちに発症しやすい傾向があります。一方で、発症に気づかず他の精神病を発症し、病院に受診してから社交不安障害の診断を受けるケースも少なくありません。
この記事では、社交不安障害の症状や原因、治療法について詳しく解説します。人の目を気にし過ぎて生活に影響がでている方の参考になるようまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
監修
尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好
名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。
社交不安障害とは
社交不安障害とは、人前で何かをするときに、必要以上に強い緊張や恐怖を感じ、そうした状況を避けるようになる病気です。人前に立ったときに、自分の振る舞いが周りから否定的に見られるのではないかと考えてしまいます。
ここでは具体的な症状やどれくらいの方がこの病気に悩んでいるか、性格との違いについてもご紹介します。
主な症状
社交不安障害の主な症状には以下のようなものがあります。
- 人前で話すことが苦手
- 初対面の人と会うことが苦手
- 人前で電話をかけることに抵抗がある
- 公共の場所で食事をすることが苦手
- 会議で自分の意見を言うことが苦手
- パーティーへの参加が苦痛
- 人が大勢集まる講義室などに入ることが苦手
また、このような場面で、以下のような身体症状がみられることも特徴です。[1]
- 心臓がどきどきする
- 顔が赤くなる
- 緊張して汗をかく
- 手足がふるえる
- めまいがする
- 声が震える
- 息苦しくなる
このような状況を経験すると、「また同じことが起こるのではないか」と不安が強まり、人前に出る場面を避けるようになります。症状が続くと人と関わることを避けて引きこもりがちになり、自信を失い、その結果うつ病を発症する方も少なくありません。[2]
どれくらいの人が悩んでいるのか
DSMの報告によると、米国での社交不安障害の生涯有病率は12.1%と約8人に1人の割合を示しており、比較的高い割合にあります。[3]社交不安障害はめずらしい病気ではなく、身近なものであることがわかります。
また、発症年齢の平均は13歳と若く、成人になってからの発症は少ない傾向です。[4]若いうちの発症が多いため性格と捉えられやすく、治療につながらないケースが多いとされています。
性格との違い
例えば、真面目で完璧主義、責任感が強いといった性格傾向の方がいますが、このような性格が必ずしも社交不安障害を発症しやすいというわけではありません。
社交不安障害は病気であり、強い不安や身体症状を伴います。一方「性格」とはその人の基本的な性質や傾向を指します。社交不安障害は性格の一部ではなく、異なるものです。完璧主義や心配性などの性格傾向は、社交不安障害のリスク要因となることはありますが、両者は明確に区別されます。
社交不安障害の原因
社交不安障害の原因は、いまだ明らかにされていません。一方で、脳にある扁桃体(へんとうたい)という部位が、社交不安障害と関係しているとの報告があります。他にも過去の対人経験や遺伝的な要因も影響があることがわかっています。
ここでは社交不安障害の原因について解説するので、くわしく見ていきましょう。
脳の働きの影響
脳にある扁桃体は、怒りや恐怖、不安などに関連する部位です。社交不安障害の場合、扁桃体の活動が強くなり、治療により社交不安障害の症状が改善すると扁桃体の反応が弱くなることもわかっています。[5]
過去の対人経験や幼少期の環境
過去に人前で経験した強いトラウマが、今の自分に対するネガティブなイメージや考え方につながることがあります。
ある研究では「愛情が少なく冷淡、または過干渉」な親の養育態度や、幼少期の対人トラウマ体験(人前での失敗・恥ずかしさなど)が社交不安障害の一因になることが報告されています。[6]
過去の限られた経験だけをもとに今のできごとをとらえてしまうことで、以前のつらい体験が、まるで今も起きているかのように思い出されてしまうのです(フラッシュバック)。 [4]
遺伝的要因
社交不安障害は、遺伝的な要因も指摘されています。社交不安障害などの不安障害の発症には、特定の遺伝子の関連が考えられており、[7]不安症の発症要因として遺伝の影響が2〜4割、環境による影響が6〜8割との報告もあります。[6]
家族に社交不安障害をもつ方がいる場合、そうでない場合に比べ発症のリスクは高いことが考えられるでしょう。
社交不安障害の治療
社交不安障害の治療には薬物療法や認知行動療法、両者を併用した治療など、その人に合った治療法を選択することが大切です。社交不安障害は治療可能な病気であるため、早めに専門の病院で治療を受けることで症状の緩和が可能です。
社交不安障害に主な治療法である薬物療法や認知行動療法について解説します。
薬物療法
社交不安障害の治療で使用される主な薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(以下、SSRI)です。[3]SSRIは抗うつ薬のひとつで、脳内のセロトニンという気分に関係する物質のバランスを整え、不安や緊張を和らげる薬です。1年ほどSSRIを長期投与した場合、60〜70%の患者さんに治療効果がみられることがわかっています。[8]
一方でSSRIは効果が出るまで時間がかかるため、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬も用いられることがあります。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は効果が現れるまでに時間がかからないため、SSRIの効果が出現するまで、抗不安薬を使用するケースも少なくありません。
認知行動療法
社交不安障害の認知行動療法(以下、CBT)は、不安を維持している「悪循環」を断ち切ることを目指す治療法です。医師や専門のカウンセラーとともに進めていきます。
患者さんは、社交場面で自分の身体の震えや赤面などの不安症状や否定的な自己イメージに注意が偏りやすく、周りの視線を避けるなどの行動をとることで、かえって不安が持続してしまいます。
治療では、まずこの悪循環を特定し、日記やビデオなどを用いて自分が想像する否定的な姿と客観的な現実の姿の違いに気づいてもらうのです。
次に、否定的な予測が現実の社交場面で本当に起こるのかを実際に体験する行動実験を行います。行動実験を通じて「恐れている最悪の事態は、実際には起こりにくい」ことを体験的に学び、ありのままの自分でも受け入れられるという気づきを得ることができるのです。
この治療は通常、週1回50分で、計12〜16回を基本として進められます。また、終了後も1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後にフォローアップの面接を行い、再発予防に努めるケースが多いです。[9]
社交不安障害のセルフチェック
社交不安障害の診断で補助的に用いられるツールとして、精神疾患簡易構造化面接法(以下M.I.N.I)を使用することがあります。M.I.N.IはDSM-Ⅳ*に基づき作成された検査です。質問に対し患者さんに回答してもらい、社交不安障害の可能性をみていきます。内容は以下の通りです。
- この1ヶ月間に人からみられたり注目を浴びたりする場面に恐怖やとまどいを感じ、恥をかきそうな状況を恐れることがあったか
- その恐怖に対して、自分でも怖がり過ぎていて異常だと感じているか
- その状況を回避したり我慢しなければならなかったりするほど、こわいと感じるものか
- その恐怖により、通常の仕事や社会生活が困難になり、明確な苦痛を感じているか
上記の内容が全て「はい」の場合、社交不安障害の可能性があるとされています。
DSM-Ⅳ*:精神障害の診断基準をまとめた国際的なマニュアル
まとめ|人の目が気になり、生活に支障がある方へ
社交不安障害は人の目が気になり過ぎて不安や恐怖心が高まり、人との交流の場を避けるようになる病気です。若い世代で発症しやすく、治療をせずに時間が経過し、数年後にうつ病やアルコール依存症、摂食障害などほかの精神疾患を発症してから受診するケースが多いとされています。
適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。症状が強く生活に支障がある場合は、早めに精神科や心療内科への相談をご検討ください。
参照
[3] 社交不安症の診療ガイドライン
[4] 厚生労働省|社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
[5]井上猛,不安症治療におけるSSRIの作用機序の神経科学的理解,不安症研究10(1),20-28,2018
[6] 古賀なな子,社交不安症者の人的資源に着目した臨床心理学的支援に関する文献研究,九州大学心理学研究
[7] 「社会不安障害の分子遺伝学的基盤の解明」課題番号 21791113(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))