統合失調症

幻聴が聞こえる原因は?|統合失調症の症状や原因、治療法を解説

「突然誰かの声が聞こえてくる……」
「自分に対する悪口が聞こえてくる……」
このような幻聴に強い不安を感じている方も少なくありません。

幻聴はストレスや睡眠不足が原因で聞こえる場合もありますが、中には統合失調症というこころの病気が隠れていることもあります。

統合失調症は、幻聴や妄想といった症状が現れ、人間関係や日常生活に支障をきたす病気です。遺伝やストレスなど、さまざまな要因が複雑に関わって発症し、薬物療法やリハビリテーションなどの治療が必要となります。適切な治療を受けることで、症状の緩和も期待できます。

この記事では統合失調症の症状や原因、治療法について詳しく解説します。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

幻聴が聞こえる原因

幻聴が聞こえると「自分は精神的な病気ではないか」と心配になることが多いですが、幻聴は必ずしも病気だけが原因とは限りません。極度のストレスや心身の疲れ、睡眠不足が重なったとき、一時的に“誰かに呼ばれる”“ささやき声がする”といった幻聴が現れることがあります。

一方で、統合失調症は患者の多くに幻聴がみられる病気です。自分が考えていることが声になって聞こえたり、誰かから命令されたりといった声が聞こえてくる場合があります。

また、静かな場所で強く感じやすく、騒音がある環境やほかの作業に集中しているときは、聞こえにくくなる場合も多いです。


統合失調症とは

統合失調症は、遺伝や脳の機能異常により考えや感情、行動がまとまりにくくなる病気です。健康な時には見られない、幻聴や妄想などの症状が現れ、人間関係などに影響を及ぼします。

日本では、約80万人の方が統合失調症を発症しており[1]、100人に1人の割合と決して少なくない発症率です。

統合失調症の根本的な原因は未だ明らかになっていません。一方で、脳の機能異常や遺伝、ストレスなどさまざまな要因が関連しあっていることがわかっています。

ここでは統合失調症の原因や、統合失調症を発症しやすい方の特徴について解説します。

統合失調症の原因

統合失調症の原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝や脳の障害、環境などさまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

遺伝の場合、1つの遺伝子が発症に影響するわけではなく、複数の遺伝子が関連していることがわかっていますが詳しくは解明されていません。[2]家族に統合失調症の方がいても、必ず発症するわけではありません。親や兄弟が統合失調症の場合の発症率は、約10%とされています。[3]

ほかにも脳内の神経伝達物質の異常や、脳の機能異常なども原因としてわかっています。神経伝達物質の1つであるドーパミンが過剰に分泌されることで、脳内での情報がうまく伝わらず幻覚や妄想などの症状が出現すると考えられています。[3]

また、発達中の脳に障害が起こると、統合失調症の発症率が高まることがあります。

  • 妊娠中期でのインフルエンザ感染
  • 出産中に赤ちゃんが低酸素状態になる
  • 出生児の低体重
  • 上記のような要因で脳発達障害が起こると、統合失調症の発症に影響を及ぼす可能性も少なくありません。[3]

統合失調症になりやすい人

統合失調症を発症する方は、もともとストレスに弱い傾向があることがわかっています。お酒に強い人とそうでない人がいるように、ストレスに対しても強い人・弱い人がいます。これは心が弱いということではなく、その人特有の体質によるものです。 

人は耐えられるストレス以上のストレスを感じた時、精神疾患になる可能性があるとされています。仕事や私生活などにおいて過度のストレスを感じ続け、ストレスへの対処がうまくできない場合、遺伝や脳の障害などほかの要因が重なった時に発症する可能性も少なくありません。


統合失調症の症状

統合失調症には、健康な時には現れない症状(幻覚・妄想など)がみられる『陽性症状』と、健康な時に備わっている機能が低下する(抑うつ、無気力など)『陰性症状』があります。

統合失調症の回復過程において、二つの症状は極端に出現する時期と落ち着く時期があることも特徴の1つです。また、認知機能障害も統合失調症の症状としてみられます。

ここでは、統合失調症の症状について詳しくご紹介します。

陽性症状

陽性症状は幻覚や妄想など、通常では存在しないはずのものが表れる状態を指します。具体的には、次のようなものがあります。[4]

幻覚 実際にはないものをあるように感じる状態
幻覚の中でも幻聴はとくにみられやすい症状
例)スピーカーから自分の悪口が聞こえる 
妄想

明らかに事実と違うことを信じ込む状態
妄想の中でも対人関係における被害妄想がとくに多い
例)周囲の人に常に監視されている

自我障害

自分の思考や行動が他人に支配されていると感じる状
例)自分が自分でないように感じる

思考障害 考えがまとまらず、話が急に飛び、意味不明な内容になる状態

陽性症状は、発症後に悪化するケースが多いです。

陰性症状

陰性症状は抑うつや意欲の低下など、本来あるべきものがみられない状態を指します。具体的な症状は次の通りです。

抑うつ 意欲や興味が低下し、何もしたくなくなる
身だしなみなどに興味がなくなり無頓着になる
感情の平板化(感情鈍麻) 周囲への関心が薄れ、感情の起伏が乏しくなる状態
不眠 眠りたいのに眠れない
朝早くに目が覚めてしまう

陰性症状は陽性症状が落ち着いてくると出現しやすくなります。人とのコミュニケーションも減りやすく、引きこもりがちになるケースも少なくありません。

認知機能障害

認知障害では、集中力や記憶力の低下などがみられます。また物事を計画立てて実行する力や、問題解決能力などの低下も特徴の1つです。認知機能障害は、統合失調症の発症初期からみられる場合が多く、陽性症状や陰性症状とは別に表れ、日常生活や社会生活に大きく影響します。


統合失調症の治療

統合失調症では、薬物療法、心理療法、リハビリテーションなどを患者の病気の時期ごとに組み立てて治療していきます。

ここでは治療効果も併せて統合失調症の治療について解説します。

薬物療法

薬物療法で主に使用されるのは、抗精神病薬です。抗精神病薬はドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作用し、症状の改善を目指します。抗精神病薬には非定型抗精神病薬と定型抗精神病薬の2種類があります。両者の違いは以下の通りです。

作用 効果 副作用
非定型抗精神病薬 ドーパミンやセロトニンの働きを調節する 陽性症状だけでなく、陰性症状の改善が期待できる 手のふるえなどの錐体外路症状、体重増加など
錐体外路症状は定型抗精神病薬に比べると少ない
定型抗精神病薬 ドーパミンの働きを調整する 幻覚や妄想などの陽性症状の改善が期待できる 手のふるえ、筋肉のこわばりなどの錐体外路症状、眠気、口渇、便秘など


服薬は毎日続け、自己判断で薬の量を減らしたりやめたりしないようにすることが大切です。症状が安定していれば、薬の量を減らせる場合もあるので必ず医師と相談して決めるようにしましょう。

心理教育

心理教育は、患者本人や家族に対して、病気の特徴や治療内容、再発予防のポイントなどを分かりやすく説明し、病気への理解とセルフケア能力、服薬継続の重要性などを高めてもらう取り組みです。

心理教育の中で、受けられる障害福祉サービスなどの社会資源についても学びます。

心理教育を実施することで、治療への意欲が高まり、再発リスクの低減や社会復帰支援に役立つことが多いです。

リハビリテーション(作業療法)

統合失調症のリハビリテーション(以下リハビリ)では、作業療法士と一緒に手工芸や音楽療法、スポーツ、日常生活訓練などの作業療法を行います。個別もしくは集団での作業療法を実施し、ストレス軽減や対人関係スキルの向上、生活機能の回復を目指します。

リハビリでは、デイケアや地域活動などを通して、職業リハビリや就労支援なども実施することも特徴の1つです。社会復帰に向けて段階的に練習を行います。


治療の経過

統合失調症の治療は、発症初期、急性期、回復期、維持期(安定期)といった時期ごとに目標や方法を変えながら進められます。

急性期は陽性症状が増悪しやすい時期です。この時期は休養や薬物療法、心理療法などをおこないながら、症状の安定化を目指します。症状が落ち着く回復期には、急性期の治療に加え作業療法などのリハビリを行い、社会復帰を目指して治療していきます。

維持期では再発を予防するために、服薬の継続や生活リズムを整え、ストレスと上手につきあうことが大切です。統合失調症は、病気を完全になくすことが難しいとされていますが、再発予防に努めることで、長期間安定した状態を保ちやすくなります。

治療は長期間にわたることが多く、継続的なフォローアップが重要です。


統合失調症の受診の目安(診断基準)

統合失調症は、幻覚や妄想、思考障害、意欲や感情表現の低下などが1ヶ月以上続く場合に疑われ、専門の医療機関(精神科・心療内科)を受診することが勧められます。[5]

特に以下のような症状が見られた場合、早めに医師に相談しましょう。

  • 実際にない声が聞こえる、誰かに監視されたり悪口を言われたりすると感じる
  • 考えがまとまらず、会話が支離滅裂になる
  • 意欲が低下し、日常生活が著しく困難になる
  • 感情表現が乏しくなり、周囲との交流を避ける

 

まとめ|幻聴に日々悩んでいる方へ

統合失調症は幻聴が聞こえる病気の1つです。幻聴や妄想などの症状が出現し、人間関係や生活に支障を与えます。一方で早期に適切な治療を受けることで、症状の緩和が期待できる病気です。

誰もいないのに自分への悪口が聞こえる、誰かに監視されている気がするなどの症状があり、生活に支障が出ている場合は、一度心療内科や精神科を受診し専門医に相談してみましょう。


参照

[1] 公益財団法人 東京都医学総合研究所|研究概要

[2] 新潟大学脳研究所|統合失調症の今

[3] 日本精神医学研究センター|[統合失調症]疾患の原因

[4] 精神医学 第5版 文光堂

[5] 日本精神医学研究センター|[統合失調症]診断基準