うつ病・うつ状態

うつ病による不眠が気になっている方へ|症状の特徴や受診の目安を解説

眠れない日が続くと、「ストレスのせいかもしれない」「そのうち眠れるだろう」と様子を見てしまうことがあります。

ただ、不眠はうつ病でみられる症状の一つでもあり、気分の落ち込みや意欲低下などをともなう場合は注意が必要です。

この記事では、うつ病と不眠の関係、眠れない原因、睡眠薬を飲んでも眠れないときの考え方、受診の目安について解説します。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

不眠はうつ病のサインの一つ?

不眠が続くからといって、必ずしもうつ病とは限りません。一方で、うつ病の症状の中に不眠がみられることも決して珍しくありません

ここでは不眠とうつ病の関係性についてご紹介します。

うつ病では睡眠の不調があらわれることがある

うつ病のサインとして、気分の落ち込みと並んで非常に多いのが「睡眠の不調」です。うつ病のある方の多くに、不眠などの睡眠障害が合併していると言われています。[1]

睡眠障害の程度はうつ病の重症度と並行することが多く、うつ病の前触れとして不眠があらわれることも少なくありません。[1]

ご自身では気分の落ち込みに気づきにくくても、「最近よく眠れない」「疲れが取れない」といった不眠の症状をきっかけに病院を受診し、うつ病が発覚するケースも多く見られます。

不眠だけでうつ病と判断はできない

不眠はうつ病でみられる症状の一つですが、眠れないからといって、それだけでうつ病と判断できるわけではありません。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠の不調が長く続く場合、その背景には睡眠障害のほか、生活習慣や慢性疾患などが関わることがあると示されています。[2][3]

また、うつ病が関係している場合は、不眠だけでなく、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、不安、意欲低下などの変化をともなうことがあります。

不眠とうつ病は互いに関連し合いますが、不眠はうつ病だけで起こるものではありません。

そのため、「眠れない」という症状だけで自己判断するのではなく、気分の変化や日中の支障があるかも含めて考えることが大切です。

 

うつ病で眠れないときにみられやすい特徴と対処法

うつ病による不眠は、寝つきにくさだけでなく、さまざまな形であらわれます。

ここでは、うつ病で眠れないときにみられやすい特徴と対処法について解説します。

気分の落ち込みや不安が眠りに影響

うつ病では、気分の落ち込みや不安が強くなるにつれて、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。

うつ病は気分だけの問題ではなく、睡眠欲を含むさまざまな意欲の低下や身体症状をともなうことがあり、心身の不調の一つとして不眠があらわれることも少なくありません。

途中で目が覚める・朝早く目が覚める

うつ病にともなう不眠は、単に「眠れない」だけではありません。布団に入ってもなかなか眠れない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてその後眠れない、眠ったはずなのに休めた感じがしない、といった形であらわれることがあります。

実際に、うつ病では入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などが合わさってみられやすいとされています。[4]

夜に眠れず昼に眠くなるなど生活リズムが乱れる

夜に十分眠れない状態が続くと、日中に強い眠気やだるさが出やすくなり、起床時間や活動時間も乱れやすくなります。

さらに、朝に起きられない、日中の集中力が落ちるといった状態が重なり、負の連鎖が続いて、結果として夜に眠れなくなる、といった悪循環につながりかねません。

睡眠に関連する症状には、睡眠障害そのものだけでなく、睡眠環境や生活習慣、嗜好品などが関わる場合もあります。そのため、睡眠だけを切り離して考えないことが大切です。

まずは生活リズムや日中の状態もあわせてみる

眠れないとき、時計を何度も見たり、「どれくらい眠れたか」ばかりが気になったりする方は少なくありません。

しかし、見るべきなのは睡眠時間だけではありません。就寝・起床時刻の乱れ、日中の活動量、カフェインや飲酒の習慣、昼寝の長さなど、生活全体を振り返ることで、改善のヒントが見つかることもあります。

あわせて、気分の落ち込み、不安、意欲低下、集中しづらさ、仕事や家事への支障が出ていないかも整理してみましょう。

睡眠の不調には生活習慣が関わる場合もありますが、それだけでは改善しないケースもあります。生活を整えても眠れない状態が続くときは、心身の不調が背景にないかも含めて考えることが大切です。

つらさが続くときは早めの相談を考える

生活リズムを見直しても眠れない状態が続く場合や、日中の生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関への相談を考検討しましょう。

とくに、不眠に加えて気分の落ち込みや意欲低下、疲労感などが続いているときは、うつ病を含めた心身の不調が関係している可能性があります

睡眠に関連する症状が続く場合は、背景に別の問題が潜んでいることもあるため、我慢を続けず相談しましょう。


睡眠薬を飲んでも眠れないときはどう考える?

うつ病にともなう不眠に対しては、睡眠薬が用いられることがあります。睡眠薬は、不眠症状を和らげる目的で使用しますが、効果の出方には個人差があり、睡眠薬を飲んでも不眠の症状が改善されないケースも少なくありません

ここでは、睡眠薬を使用しても眠れない原因や、対策についてご紹介します。

睡眠薬を飲んでも眠れない原因はさまざま

睡眠薬を飲んでも眠れないときは、「薬が効いていない」とすぐに決めつけるのではなく、まず原因が一つではないことを考えてみましょう。

睡眠薬を飲んでも眠れない原因としては、次のようなものが考えられます。

  • 強い不安や考えごとが続き、眠りに入りにくくなっている
  • 睡眠時無呼吸症候群など、別の睡眠障害が関係している
  • 薬の効果が今の不眠のタイプに合っていない
  • 長く使っていることで、薬の効き方が変わっている可能性がある

睡眠薬は眠りを助ける薬ですが、うつ病の根本的な治療ではないため、症状や背景によっては十分な効果が得られません。

うつ病にともなう不眠では、睡眠薬だけに頼るのではなく、うつ病の治療、不眠への対応、生活リズムの調整をあわせて行うことが重要です。

自己判断で薬をやめたり増やしたりしない

処方されている睡眠薬や抗うつ薬は、自己判断でやめたり増やしたりしないことが大切です。薬の変更は、症状の変化や副作用の有無を確認しながら行う必要があるためです。

市販の睡眠改善薬についても、ほかの薬との重複使用や連続使用には注意が必要で、不眠が続く場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

 

うつ病による不眠はいつまで続く?治る?

眠れない日が続くと、心身の疲れが取れにくくなり、仕事や家事など日常生活にも影響が出やすくなります。そのため、「この不眠はいつまで続くのだろう」「治るものなのだろうか」と不安になる方もいるでしょう。

一方で、うつ病にともなう不眠は、状態に合った対応を行うことで軽減していくこともあります。ここでは、不眠が続く期間の考え方や、改善がみられないときの向き合い方について解説します。

不眠が続く期間には個人差がある

うつ病による不眠がどれくらい続くかは、人によって異なります。

うつ病の急性期治療における不眠症状の経過をみた研究では、8週間の治療中に睡眠症状の変化がみられる一方で、改善の仕方にはばらつきがあることが報告されています。

さらに、うつ病が部分的に改善したあとも不眠が持続したり、再び目立ったりする例も示されており、「何日でよくなる」と一律にはいえません。[5]

不眠が続くと焦りや不安が強くなりやすいですが、まずは今の状態に合った対応を続けながら経過をみていくことが大切です。

状態の回復とともに眠りが整ってくることもある

うつ病の症状が和らいでいくのにともなって、少しずつ眠りが整ってくることもあります。最初からぐっすり眠れるようになるとは限りませんが、寝つきや途中で目が覚める回数、朝のつらさなどが徐々に変化していく場合もあります。

眠りの変化だけで一喜一憂しすぎず、気分や意欲、日中の過ごしやすさなども含めて全体の回復にも注目してみましょう。

治らないと感じるときは治療方針の見直しが必要なこともある

生活習慣を整えたり治療を続けたりしていても、不眠がなかなか改善しないことも少なくありません。

そのようなときは、「自分ではもうどうしようもない」と抱え込むのではなく、専門医と相談しながら治療方針の見直しも検討しましょう。

服薬の内容や生活状況、ほかの不調の有無などをあらためて確認することで、今の状態に合った対応が見えてくることもあります。

 

受診を考えたい目安

眠れない状態が続くときは、我慢しすぎず受診のタイミングを考えることも大切です。とくに、次のような場合は早めの相談を検討しましょう。

  • 不眠が続き、仕事や家事、学業に支障が出ている
  • 気分の落ち込みや不安、意欲低下も続いている
  • 生活リズムを整えても改善しない
  • 市販薬を使っても眠れない状態が続く
  • 眠れなさへの焦りが強くなっている

不眠は一時的な疲れだけでなく、心身の状態を見直すきっかけになることもあります。

 

まとめ|うつ病による不眠が続くときは早めの対応が大切

うつ病による不眠は、単なる寝不足ではなく、心身の不調の一つとしてあらわれることがあります。

眠れない状態が続くときは、睡眠だけに目を向けるのではなく、気分の落ち込みや意欲低下、日中の過ごしにくさなども含めて今の状態を整理することが大切です。

生活を整えてもつらさが続くときは、一人で抱え込まず、必要に応じて相談先を考えてみましょう。


【参考】

[1]厚生労働省科学研究費補助金(休養班研究事業)H17-19年分担研究報告書|睡眠問題とうつ病に関する研究

[2]厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド 2023

[3]Daniel J Taylor et al.Comorbidity of chronic insomnia with medical problems.Sleep. 2007 Jul 1;30(7)

[4]うつ病診療ガイドライン2025

[5]Manish Dama,et al. The course of insomnia symptoms during the acute treatment of major depressive disorder: A CAN-BIND-1 report.Psychiatry Research Volume 325, July 2023