確認癖がやめられない!強迫性障害の症状や治療法を解説

「外出したけど、鍵を閉めて来たかな……」
「ガスも消して来たかな」
「何度も確認しているのに、不安が消えない……」
こうした『確認癖』に悩む方は少なくありません。
実はこのような確認癖は、強迫性障害(OCD)という心の病気が隠れているかもしれません。
強迫性障害は一つのことが気になり、やりすぎだとわかっていても特定の行動をやめられない病気です。治療には薬物療法や心理療法が中心となり、適切な治療を行うことで症状が改善する可能性があります。
この記事では、強迫性障害の仕組みや特徴、そして受診の目安についてわかりやすく解説します。
監修
尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好
名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。
強迫性障害とは不安と行動を繰り返してしまう病気
強迫性障害は、自分の意思とは無関係に、不安な考えが頭に浮かび、それを打ち消そうとして特定の行動を繰り返してしまう心の病気です。
人口のうち、約1〜2%の方がこの病気を発症しており、発症平均年齢は20歳前後とされています。[1]男女で発症率に大きな差はありませんが、女性より男性の方が早く発症しやすいことがわかっています。[1]
強迫性障害の症状
強迫性障害には、自分の意思に反して勝手に考えが浮かぶ「強迫観念」と、特定の行動を繰り返してしまう「強迫行為」が主な症状の特徴です。
強迫観念と強迫行為
本人にとって無意味で不快なものとして捉えている考えなのに、浮かんできてやめられない状態を強迫観念と呼びます。この強迫観念を打ち消すため、繰り返し過剰に行う行動や心の中の行為が強迫行為です。[2]ほとんどの場合、強迫観念と強迫行為の両方の症状がみられます。
強迫行為を行うと、その場では不安が和らぎますが、しばらくすると不安の対象がさらに脅威に感じられるようになり、強迫行為が増えやめられなくなるという悪循環に陥ります。こうした状態が続くと、強迫観念や強迫行為を引き起こす状況や動作を避けるようになり、日常生活にも大きな制限がかかるようになるでしょう。[3]
症状の具体例
強迫観念や強迫行為の具体例をご紹介します。
| 強迫観念の具体例 |
・便や尿、汚れ、バイキンなどに過剰な不安を感じ、清潔さに強くこだわる ・洗剤や有害な化学物質、放射能などに触れることで健康を損なうのではないかと強く心配する ・日常会話や文章で、誤った表現や不適切な言葉を使ってしまったのではと考えてしまう ・火事や強盗など、恐ろしい事件が起こるのではないかと心配し続ける |
|---|---|
| 強迫行為の具体例 |
・玄関の鍵を何度も見に行く ・コンロの火が消えているのを確認しないと外出できない ・メールやLINEを何度も開いて誤字をチェックする ・スマホの送信ボタンを押せず時間がかかる ・何度も手洗いを繰り返す ・心の中で呪文を唱える |
強迫性障害の原因
強迫性障害の原因は、いまだはっきりとは解明されていません。一方で、脳の情報伝達に関連する物質がうまく働かないことや、神経回路の異常、遺伝的要因などが関与していることがわかっています。[3]
ある研究では、強迫性障害患者の脳では、神経と神経の間に存在し情報を伝達するセロトニンという物質を細胞内に取り込むためのタンパク質が減少していることが明らかになりました。[4]
また、ある研究では強迫性障害に関連しやすい4つの遺伝子についても報告されており、強迫性障害の発症には遺伝的な要因が影響することもわかっています。[5]
ただし、家族に強迫性障害の方がいたとしても、必ずしも発症するわけではありません。脳の情報伝達に関するバランスの崩れや、ストレスや生活環境の変化など、さまざまな要因が絡み合って発症する可能性があるでしょう。
強迫性障害の治療法
強迫性障害の治療では薬物療法と精神療法が中心になります。どちらの治療法を選ぶか、あるいは両方を組み合わせて行うかは、患者さんの年齢や症状などによって判断することが多いです。本章では各治療法について詳しくご紹介します。
薬物療法
薬物療法では、日本では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使用するケースが多いです。[6]SSRIは抗うつ薬の1つで、強迫性障害の治療に対して有効であることが多くの研究でわかっています。
SSRIの副作用では、吐き気、食欲不振、不安や神経過敏の増強、ふるえ、性機能の障害などが特徴です。副作用は一過性のものがほとんどで、通常投薬開始1〜4週間後には改善されます。[7]
その他には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使用することもあります。
薬物療法では最初は少量から開始し、副作用や効果を確認しながら徐々に量を増やす場合が多いです。薬を2〜3ヶ月服用し、その効果について確認する流れとなります。
心理療法
強迫性障害の心理療法としては、認知行動療法や曝露反応妨害法などが行われます。各心理療法の概要については、以下の通りです。
| 心理療法 | 内容 |
|---|---|
| 認知行動療法 |
不適切な思考パターンや認知を、治療者と話し合いながら客観的に修正していく方法。実際には強迫行為をしなくても、不安は自然に軽減するという認識を学ぶ。 例)「手を洗わないと大変なことになる」という強迫観念に対し、実際にはそうではないこと、その考えが間違っていることを、日記などに記録しながら振り返って学ぶ |
| 曝露反応妨害法 |
認知行動療法の一つで、不安や強迫観念が生じる場面を意図的に作り、強迫行為を我慢する練習を行い、不安を減らす方法 例)「鍵を何度も確認したい」という強迫観念に対し、鍵を確認しないまま一定時間耐え続け、不安が徐々に減ることを知る |
治療による効果
強迫性障害は多くの場合、専門医のサポートのもとで適切な治療を受けることで、症状の軽減や改善が期待できる病気です。海外の研究では、曝露反応妨害法を中心とした治療が、とくに高い改善率を示すこともわかっています。[8]
また、病気についてご本人だけでなくご家族も含めて正しく理解し、症状と向き合う方法について一緒に学んでいくことも大切です。
受診を考える目安
「自分はもしかして強迫性障害かもしれない」と感じた場合の受診の目安について、具体例をご紹介します。
- 確認に時間を取られ、仕事や家事に支障がある
- 自分でも「バカげている」と感じるのにやめられない
- 家族に「また確認してるの?」と言われる
このような状態が続き、日常生活に支障をきたしている場合は、心療内科や精神科への受診を検討しましょう。
強迫性障害に関するよくある質問
ここでは、強迫性障害に関するよくあるご質問についてお答えします。
自分が強迫性障害か確認できる方法はありますか?
自分が強迫性障害かどうかをチェックする簡単な方法として、以下のようなセルフチェック項目があります。
- 何度も同じことを繰り返さないと気が済まない行動がある
- どうしてもやめられない考えや行動がある
- その考えが自分にとって不快である
- その考えや行動が日常生活や仕事に支障をきたしている
- 自分の考えに対して正しい確信は持てず、他人に強制されているわけではないと理解している
これらの項目に複数当てはまり、生活に支障が出ている場合は強迫性障害の可能性があります。セルフチェックはあくまで目安であり、確定診断には精神科や心療内科の専門医の診断が必要です。不安な場合は早めに医療機関を受診しましょう。
強迫性障害を発症した場合の日常生活での注意点はありますか?
強迫性障害は、生活リズムの乱れで症状が悪化する可能性がある病気です。症状を悪化させないためにも、規則正しい生活や良質な睡眠、栄養バランスの取れた食事や適度な運動を心がけましょう。ストレスを溜めすぎないことも大切です。
また、強迫行為をご自身の判断で強引にやめると、強い不安が生じることがあります。必ず医師や心理士などの専門家と相談の上で段階的に取り組むことを意識しましょう。
まとめ:確認癖で悩んでいる方へ
確認癖は、単なる性格ではなく強迫性障害の症状の場合があります。また、強迫性障害は「治療で回復が期待できる病気」です。
「こんな自分はおかしい」とご自身を責めなくて大丈夫です。
不安を我慢せず、早めに相談することが改善への第一歩となります。不安が少しでも軽くなるよう、早めに専門家に相談してみましょう。
参照
[3] 兵庫医科大学病院|もっとよく知ろう!病気ガイド|強迫症(強迫性障害)
[4] 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構|強迫性障害患者の脳内ではセロトニンを神経細胞内に取り込むタンパク質が減少する
[6] 強迫症の診療ガイドライン