気分の浮き沈みが激しい原因は双極性障害?うつ病との違いや治療法をご紹介

「最近、気分の浮き沈みが激しい……。」
「もしかして、何かしらのこころの病気になっているかも……。」
気分が異常に高まる状態が続いたあと、急激に気分が落ち込むような状況が繰り返される場合、双極性障害(双極症・躁うつ病)の可能性があります。
双極性障害は、躁エピソードと抑うつエピソードが交互に現れるこころの病気です。一度発症すると再発のリスクが高いとされていますが、適切な治療により再発を予防できることが期待されます。
本記事では双極性障害の症状や診断、治療法について詳しくご紹介します。自分や大切な人の変化にあてはまる部分があれば、無理をせず専門家に相談し、適切な治療につなげていきましょう。
監修
尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好
名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。
双極性障害とは
双極性障害は、気分が高揚する躁エピソードと、気分が落ち込む抑うつエピソードが周期的に現れる精神疾患です。
100人に1人弱の方が一生のうちに一度は双極性障害になると言われており、決して珍しい病気ではありません。[1]また、発症年齢は20歳前後が多いと言われていますが、中学生から高齢者までさまざまな年齢層で発症する可能性がある病気です。[1]
双極性障害の発症要因
双極性障害の発症要因には、遺伝的要因や脳内の神経伝達物質のバランス異常、環境的ストレスなどが複雑に関与していると考えられています。 [2]また、家族に双極性障害の方がいる場合や、強いストレス、睡眠障害なども発症に影響するとされています。
双極性障害の症状
双極性障害は、躁エピソードと抑うつエピソードが交互に現れる病気です。各症状について、下記の表にまとめました。
| 状態 | 主な症状 |
|---|---|
| 躁エピソード |
|
| 抑うつエピソード |
|
| 混合状態 |
|
双極性障害の診断
双極性障害の診断は、医師が症状の経過を見ながら、DSM-5やICD-10などの国際的な診断基準に基づいて診断します。
具体的には、躁エピソード・軽躁エピソード*、抑うつエピソードの各状態が現在もみられているか、あるいは過去にあったかを確認します。それらの組み合わせによって 「双極 I 型障害」「双極 II 型障害」と診断します。[4]
軽躁エピソード*:躁エピソードより軽く、同様の状態が4日以上続き、周囲からいつもと違うと分かるが、社会生活上の大きな支障はなく、入院を必要としない状態
「双極 I 型障害」と「双極 II 型障害」の違いは、以下の通りです。
双極I型障害:躁エピソードと抑うつエピソードがある
双極II型障害:躁エピソードはなく、軽躁エピソードと抑うつエピソードがある
また、ほかの身体や脳の病気で双極性障害と同じような症状を示すこともあるため、必要に応じて身体診察、血液検査、頭部 CT/MRI、脳波検査などを行う場合もあります。
双極性障害の治療法
双極性障害の治療では、薬物療法と心理療法が中心になります。また、躁エピソード・抑うつエピソード・寛解期の各状態によって治療法は変わってきます。
躁エピソードの治療法
躁エピソードでは、薬物療法を行い、必要に応じて入院して気持ちを安定させます。
使用される治療薬は気分安定薬のバルプロ酸や炭酸リチウム、抗精神病薬のアリピプラゾール、クエチアピン、リスペリドン、アセナピン、パリペリドンなどを最初に用いる場合が多いです。[4](適応外使用を含む)
抑うつエピソードの治療法
抑うつエピソードの治療では、可能な限りストレスを避け、気持ちが楽になることを目指します。症状が重い場合は、入院することも必要です。
抑うつエピソードの治療でも、気分安定薬や抗精神病薬が基本となります。うつ病治療で用いられる抗うつ薬は躁転のリスクがあるためなるべく避け、気分安定薬や非定型抗精神病薬(クエチアピン・ルラシドン・オランザピンなど)を使用します。
また、認知行動療法などの心理療法も実施します。心理療法を通して、自分の病気について知り、病気の受け入れ方やコントロールの仕方について学ぶことが目的です。
寛解期の治療法
躁エピソードや抑うつエピソードが落ち着いている時期のことを寛解期といいます。双極性障害は再発を繰り返しやすい病気であるため、寛解期であっても再発予防のために薬の服用を続けます。
寛解期になると症状が落ち着くため、自己判断で薬をやめてしまうケースも少なくありません。薬を途中でやめてしまうと、再発の可能性が高まることが分かっています。[4]
服用について決して自己判断で中止するのではなく、医師としっかり相談することが大切でしょう。
寛解期の治療法は薬物療法が中心ですが、必要に応じて心理療法を実施する場合も少なくありません。[4]
双極性障害の経過
躁エピソードは突如起こり、急激に進みます。治療を受けなければ、躁エピソードが2〜3ヶ月程度続き、軽度の躁エピソードや抑うつエピソードも6ヶ月以上続く可能性があるでしょう。[1]また、躁エピソードから回復する場合、そのまま回復するよりも、抑うつエピソードを経て回復するケースがほとんどです。
双極性障害は再発を繰り返しやすい病気であるため、再発を予防することが重要です。躁エピソードや抑うつエピソードが一度で済むケースはほとんどなく、一生のうちに何度もくり返す場合が多いです。一方で、再発予防を継続することで、安定して日常生活を送ることも可能です。
症状がみられないからといって、治療を自己判断でやめてしまうと再発を繰り返し、日常生活や社会生活への影響も大きくなってしまいます。
双極性障害でよくある質問
本章では双極性障害について、よく聞かれる質問をまとめています。
Q1.双極性障害とうつ病は違う?
双極性障害とうつ病は異なる病気です。双極性障害とうつ病では、治療目標がそれぞれ違います。
| 治療目標 | |
|---|---|
| 双極性障害 | 躁エピソード・抑うつエピソードの波をコントロールする |
| うつ病 | うつをよくする |
一方で、両者は間違われやすく、双極性障害のほとんどの方が、最初にうつ病と診断されやすいです。理由として、双極性障害の抑うつエピソードの症状と、うつ病の抑うつエピソードの症状が似ていて区別しにくいからです。
双極性障害の診断には、過去に躁エピソードの時期があったことを確認する必要があります。しかし躁エピソードの場合、気分が高揚していて受診を考えないケースが多いです。躁エピソードの状態を「あの時が本来の自分だった」と誤認してしまう方もいます。
抑うつエピソードを何度も繰り返す場合は双極性障害の可能性があるので、抑うつエピソードが落ちついた時期に、抑うつエピソードになる前の様子を振り返ることが大切です。[1]
Q2.双極性障害の再発を防ぐにはどうしたらよいか?
双極性障害の再発を防ぐためには、自己判断で薬や治療を中止しないことが大切です。
最初の躁や抑うつエピソードから次の再発までは、通常5年ほど間隔がありますが、放置すると次第に間隔が短くなり、年に何度も再発するようになります。再発を繰り返すほど再発しやすくなるため、再発予防を意識することが非常に重要でしょう。
再発予防には、治療の継続に加え生活リズムを整えることも大切です。睡眠・食事・活動時間を一定に保つことで、気分の安定をはかります。夜更かしや昼夜逆転などはなるべく避けましょう。
ほかにも、気分の変化を記録することや、前兆を感じたら早めの受診を意識しましょう。日々の気分や睡眠時間、体調、出来事などを日記に記録することで、再発のサインに早く気づくことができます。
- 睡眠時間が短くなっている
- テンションが上がりすぎている
- 何もやる気が出ない
などのサインが出たら、早めに医療機関へ相談しましょう。
まとめ:双極性障害は適切な治療で症状が落ち着く病気
双極性障害は極端に気分が高まる躁エピソードと、気分の落ち込みが激しい抑うつエピソードを繰り返す病気です。
特に躁エピソードの場合、病気に気づかないことが多く、放っておくと再発のリスクが高くなる病気です。早期に適切な治療を受けることで、症状が寛解し、再発のリスクを抑えることができます。
もし「双極性障害かもしれない」と不安に感じているのであれば、専門医への早めのご相談をおすすめします。
【参考・参照】
[1] 日本うつ病学会|一般の方へ|資料|双極症とつきあうために
[2] 名古屋大学 脳とこころの研究センター|脳とこころの病気について