注意欠如・多動症(ADHD)

大人のADHDで病院に行くべき?受診の目安と精神科・心療内科で相談できること

仕事のミスや忘れ物、遅刻、片づけの苦手さ、人間関係のつまずきなどが続くと、「自分はADHDかもしれない」と感じることがあるかもしれません。

一方で、「でも病院に行くほどなのだろうか」と迷う方もいるのではないでしょうか。

大人のADHDは子どもの頃から傾向があっても、社会に出てから困りごとが大きくなり、初めて気づかれることもあります。

この記事では、病院に行くべきか迷う大人の方に向けて、受診を考えたい目安や相談先、受診前に整理しておきたいことをわかりやすく解説します。

 

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

大人のADHDで病院受診をためらいやすい背景

ADHDは、不注意や多動性衝動性といった特徴がみられる発達障害です。

子どもの頃からADHDの傾向があっても、個性の一つと捉えられたり、周囲の配慮があったりして、自分がADHDかもしれないと気づかないケースも少なくありません。[1]

一方で、大人になって困りごとが表面化し、病院受診を検討しても、なかなか気が進まない方も多いです。

ここでは、大人になってからADHDが気になっても、病院受診をためらいやすい理由についてご紹介します。

子どもの頃は特性が見過ごされやすい

以前はADHDに対する認知が今ほど高くなく、「少し落ち着きがない子」「忘れ物が多い子」などと受け止められ、そのまま特性が見過ごされることも少なくありませんでした。

現在は、乳幼児健診や地域支援の場で早期に相談につながることもありますが[2]、乳幼児期は発達の個人差も大きく、早い段階でははっきり判断できないこともあります。

そのため、子どもの頃には特性に気づかれず、大人になって仕事や生活の中で困りごとが目立ってから、受診を考える方もいます。

「性格の問題かもしれない」と自分で判断してしまいやすい

大人のADHDでは、忘れ物や先延ばし、片づけの苦手さなどが目立つことがあります。ただ、こうした特徴は「だらしない」「努力不足」と受け止められやすく、ご自身でも性格の問題だと考えてしまう方は少なくありません。

周囲からも「気をつければできる」と見られやすく、困りごとの背景に発達特性があるとは気づきにくい場合が多いです。そのため、「病院に行くほどではない」「自分が頑張ればよい」と受診をためらうこともあります。

 

大人がADHDで受診を考えたい3つの目安

ADHDが気になっていても、「病院に行くほどなのだろうか」と迷う方は少なくありません。

実際には、特性そのものがあるかどうかだけでなく、仕事や日常生活への影響の大きさが受診を考える目安になります。

ここでは、大人がADHDで受診を考えたい主な目安を3つご紹介します。

仕事や日常生活に支障が出ている

大人のADHDでは、不注意や衝動性、段取りの苦手さなどが、仕事や日常生活の中で困りごととして表れやすいです。たとえば、次のような状況がみられます。

  • 仕事で同じようなミスが続く
  • 締切や約束を守るのが難しい
  • 忘れ物や遅刻が多い

また、仕事だけでなく、家事が思うように進まない、お金や時間の管理がうまくいかないなど、生活全体に影響が出ることも少なくありません。

子どもの頃から似た傾向が続いている

ADHDは、通常低年齢からみられる脳機能の発達障害です。[3]そのため、症状は子どもの頃からみられる可能性があります。

ADHDの子どもの特性でみられやすい症状は、以下の通りです。

  • 昔から落ち着きがないと言われていた
  • 忘れ物が多かった
  • 宿題や片づけが苦手だった

上記のような傾向が子どもの頃から続いており、現在も仕事や日常生活の中で困りごとがみられる場合は、受診を考える目安の一つになります。

自分なりの工夫だけでは限界を感じている

忘れ物や抜け漏れを減らすためにメモを取るアプリで予定を管理するやることをリスト化するなど、工夫を重ねている方も多いでしょう。

それでも、思うように改善せず、同じ失敗を繰り返してしまうと、「自分は何をやってもだめだ」と感じやすくなります。また、頑張っているのにうまくいかない状態が続くと、気分の落ち込みや自己否定感が強くなることもあります。

工夫をしても限界を感じる場合は、努力が足りないのではなく、別の支援や対処が必要なサインかもしれません。そこで、一人で抱え込まず、相談先を持つことも大切です。

 

ADHDが気になる大人は何科に行けばよい?

受診を考えたときに、まず迷いやすいのが「どこ(何科)に相談すればよいのか?」という点です。

大人のADHDが気になる場合は、精神科や心療内科が主な相談先になります。受診する前に、発達障害を含むこころの不調に対応している医療機関かどうかを確認するとよいでしょう。近年では、大人の発達障害の専門外来を設けている医療機関も増えています。

受診先に迷った場合は、クリニックのホームページなどで、ADHDや発達障害の診療に対応しているかを確認してみましょう。受診先を決めること自体に悩みすぎず、まずは相談できる場所を見つけることが大切です。

 

受診前に整理しておくと相談しやすいこと

診察では、医師が状況を把握するために、ご本人の困りごとやこれまでの経過について丁寧に確認します。必要に応じて、ご家族から子どもの頃の様子などを伺うこともあります。

そのため、受診の際に慌てないよう、あらかじめ状態を整理しておくと相談しやすくなるでしょう。ここでは、受診前に整理しておきたいポイントについてご紹介します。

どのような場面で困っているかを書き出す

まず整理したいのは、どのような場面で困っているかです。

仕事でのミスや確認漏れ、家事の抜け漏れ、人間関係のすれ違い、お金や時間の管理の難しさなど、具体的な場面を書き出してみましょう。

「なんとなく生きづらい」だけでは伝えにくくても、「仕事で締切を守れない」「家では片づけが続かない」など具体的になると、困りごとの傾向が見えやすくなります

いつ頃から続いているかを振り返る

現在の困りごとが、いつ頃から続いているのかを振り返ることも大切です。

子どもの頃、学生時代、就職後、転職後など、時期ごとに思い返してみると、似た傾向が長く続いているかどうかが見えてきます

「昔から同じことで困っていたのか」「大人になってから目立つようになったのか」を整理しておくと、受診時にも伝えやすくなります。

これまで自分で試した工夫をまとめる

これまでに試した工夫も、相談の参考になります。

たとえば、メモを取る、リマインダーを使う、タスクを細かく分ける、家族や職場に相談するなど、できる範囲で取り組んできたことがあるかもしれません。

何を試して、どこまではできたのか、何が難しかったのかを整理しておくと、今後の対処法を考える手がかりになります。

家族から見た様子や過去のエピソードも参考になる

自分では当たり前だと思っていることでも、家族や周囲から見ると特徴として見えている場合があります。

子どもの頃の様子や昔からの癖などは、自分だけでは思い出しにくいこともあるため、家族に聞いてみるのも一つの方法です。母子手帳や幼少期の記録が残っている場合は、受診時に持参すると参考になることもあります。

「ADHDかどうか」より「何に困っているか」を伝えればよい

受診前に、「本当にADHDかどうかわからないから行きづらい」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、受診の段階で自分で診断名を決めておく必要はありません。大切なのは、「何に困っているか」を伝えることです。

仕事で困っていること、生活でつまずいていること、気分の落ち込みや不安など、そのまま話すだけでも十分に相談のきっかけになります。

 

病院に行くとどんなことが相談できる?

病院では、ADHDかどうかを判断するだけでなく、現在の困りごとの背景や、今後の対処法について相談できます。

相談できる内容の一例は、以下の通りです。

  • 現在の困りごとや生活への影響
     例)仕事でのミスや忘れ物、遅刻、家事のしづらさ、人間関係の悩みなど
  • 子どもの頃からの傾向やこれまでの経過
     例)昔から落ち着きがなかった、片づけが苦手だったなど
  • ADHD以外の状態が関係していないか
     例)気分の落ち込み、不安、不眠など別の不調がないか
  • 必要に応じた検査や評価 
     例)問診に加えて、質問票や心理検査などを行うこともある
  • 治療や対処法の選択肢 
     例)薬だけでなく、生活の工夫や環境調整なども含まれる

受診は、診断名をつけることだけが目的ではありません。困りごとを整理し、自分に合った対処法を考えるきっかけにもなります。

ADHDの診断や治療の流れについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。受診をご検討の場合は、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:大人のADHDとは?特徴やセルフチェック、治療法について解説

 

まとめ|大人のADHDで迷ったら一人で抱え込まず相談を

大人のADHDが気になっても、「病院に行くほどではないかもしれない」と迷う方は少なくありません。

ただ、仕事や日常生活に支障が出ている、自分なりの工夫では限界を感じる、気分の落ち込みや不安も重なっている場合は、一度専門の医療機関に相談してみることも大切です。

受診は診断名を決めるためだけではなく、困りごとの背景を整理し、今後の対処法を考えるきっかけにもなります。一人で抱え込まず、まずは精神科・心療内科で相談してみてはいかがでしょうか。


【参考】

[1]政府広報オンライン|発達障害に気づいたら?大人になって気づいたときの専門相談窓口

[2]厚生労働省|発達障害児者の初診待機等の医療的な課題と対応に関する調査

[3]厚生労働省|発達障害の理解