パニック障害

急に不安になる原因は?パニック障害の症状や受診の目安

「突然、理由もわからず不安に襲われた」
「心臓がドキドキして息苦しい」
このような経験をされたことはありませんか。

強い不安や動悸の原因は一時的なストレスや疲れによる場合もありますが、中にはパニック障害という病気が関係しているケースもあります。

この記事では、急に不安になる原因や、パニック障害の症状・治療についてわかりやすく解説します。自分の不安の正体を知ることで、安心して対処する一歩につなげましょう。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

急に不安になるのはなぜ?よくある原因

急な不安には、ストレスや自律神経の乱れなどが原因の場合もありますが、パニック障害などの病気が原因となる場合も少なくありません。ここでは、誰にでも起こり得る一時的な不安から、治療が必要な場合まで、急に襲われる不安の理由についてわかりやすく解説します。

一時的なストレスや疲れによる不安

仕事や人間関係、睡眠不足などによる一時的なストレスで、不安を感じることがあります。この場合、しっかり休息を取れば自然に落ち着くことが多いです。

自律神経の乱れによる不安感

過労や生活リズムの乱れで自律神経が不安定になると、動悸や息苦しさなどの身体症状が出ることがあります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、両者のバランスが崩れることで、動悸や息苦しさなどの身体的症状が出現します。これらの症状が続くと不安を感じやすくなるでしょう。

パニック障害などの病気が関係している場合

理由もなく強い不安や動悸が繰り返し起きる場合、パニック障害の可能性があります。パニック障害は不安障害の一つで、突然起こる急激な不安や動悸などが特徴的な症状です。

この不安や動悸、胸の痛み、息苦しさなど突如起こる症状を『パニック発作』と呼びます。パニック発作ではさまざまな身体症状がみられるため、発作が起こると心臓や肺、脳などの病気ではないかと心配になることも少なくありません。

恐怖は本人にとって非常に強いものなので、パニック発作に襲われた場面を避けたり、パニック発作が起きたらどうしようと悩んだりすることにより、生活への支障がみられます。


パニック障害とは

パニック障害は、突然強い不安発作が起きる病気です。発作が起こると「死んでしまうかも」と感じるほどの恐怖に襲われることもあります。ここでは、パニック障害の症状やどのような時に起こるのか、ほかの病気との違いについても見ていきましょう。

主な症状(動悸・息苦しさ・めまい・強い不安など)

パニック障害でみられるパニック発作には、以下のような症状があります。[1]

  • 動悸
  • 心拍数の増加
  • からだの震え
  • 息切れや息苦しさ
  • 胸の痛み・苦しさ
  • 吐き気
  • めまい
  • 自分自身をコントロールできない
  • 死への恐怖感

上記のような症状は突然現れ、10分以内にピークに達して、数分で消失するのが特徴です。[1]

また、パニック障害では、過去に発作を経験したことで、その辛さや恐怖心が記憶に残り、「また同じような発作が起きるのではないか……」という不安に襲われることがあります。この不安は『予期不安』と呼ばれ、予期不安を感じて行動が制限されることも少なくありません。

ほかにも、パニック障害に関連する症状として、『広場恐怖』があります。広場恐怖とは、強い不安に襲われた時にすぐに逃げられない、誰かにたすけを求められない場所や状況に対して恐怖や不安を感じ、その場所を避けてしまう状態です。[2

具体的な例としては以下のような状況があります。

  • スーパーのレジの行列に並んでいるとき
  • 映画館や教室などの空間の中央に座っているとき
  • バスや飛行機などの公共交通機関の利用時
  • 美容院や歯科医院などの閉鎖的空間にいるとき

上記のような状況下でパニック発作を経験した後に、その場所に対して不安を感じ、広場恐怖を発症する可能性があります。

パニック障害の原因

パニック障害の原因は今のところはっきりとわかっていません。脳内で不安を感じる神経系の機能異常が関連していることがわかっていますが、具体的にはいまだ解明されていません。[3

また、パニック発作の発生は、状況によって予想できるものとできないものがあります。リラックスしている時や寝ている時でも生じることがあります。明らかな理由がないのに突然発生することがあるため、過去に発作が起こった場所や状況などを避けるようになり、生活に影響が及ぶことも少なくありません。

ほかの病気との違い

パニック障害では動悸など心臓の病気と似た症状が出るため、はじめは循環器内科などを受診して発見されることが多いです。

動悸を感じる病気には肺の病気や甲状腺機能亢進症などもあるため、これらの病気との鑑別も行う必要があります。

また、パニック障害はほかの病気を伴っているケースも少なくありません。うつ病やPTSDといった病気でパニック発作が出現することもあります。[4


パニック障害の診断と治療方法

「もしかして自分もパニック障害では?」と感じたとき、気になるのが診断と治療方法です。

適切な診断を受け、治療を始めることで多くの人が症状をコントロールできるようになります。ここでは、診断の流れや治療法について詳しく解説します。

パニック障害の診断

パニック障害の診断では、問診や検査を通して下記の内容を確認し、診断します。[5]

  • 『予期しない激しいパニック発作』が突然繰り返し(2回以上)起こる
  • 発作がまた起こるのではと「強い不安」や「心配」をずっと感じる(予期不安)
  • 発作がきっかけで似た状況や場所を避け、生活が変わる(回避行動)
  • 上記のような強い不安や回避する生活が1か月以上続く
  • これらの症状は、薬の副作用やほかの病気(例:甲状腺の病気、心臓や肺の病気)の影響ではない
  • 「社会不安症」「特定の恐怖症」「全般性不安症」「強迫症」「心的外傷後ストレス障害」など、ほかの精神的な病気によるものでもない

主な治療法(薬物療法・認知行動療法・生活改善)

パニック障害の治療は、薬物療法と精神療法を実施します。患者の年齢や症状等を考慮し、いずれかまたは両方の治療法を選択します。

薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が中心です。[5]

効果 副作用
SSRI
(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • 脳内のセロトニンの再取り込みを阻害し、シナプス間のセロトニン濃度を高めることで不安やパニック症状を軽減する
  • 数週間から数ヶ月かけて少しずつ効果がみられる
  • 眠気・発汗・怠さ・吐き気・下痢・不眠など
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • 即効性があり、不安やパニック発作の急性症状を速やかに緩和する
  • 眠気・記憶障害・便秘・口渇など
  • 長期で使用すると、依存性や耐性がつく場合も

また、精神療法では認知行動療法マインドフルネス認知療法森田療法などが実施されています。各精神療法の詳細は以下の通りです。

内容
認知行動療法 考え方(認知)と行動パターンに注目し、問題となる思考や行動を修正することで症状を改善する
マインドフルネス認知療法 瞑想や、ヨガ、グループディスカッションなどを組み合わせて、現在の状態を観察し、少し距離を取るスキルを学ぶ方法
森田療法 日本発祥の精神療法で、症状を否定せず「あるがまま自然に受け入れる」を重視し、日常生活や行動に取り入れることで自身の回復力を引き出す

 

セルフケアと受診の目安

症状が軽い場合は、日常生活の工夫で落ち着くこともあります。しかし、発作が続いたり生活に支障が出たりする場合は、医療機関への相談が必要です。

ここではご自身でできる対処法と受診の目安についてまとめました。

自宅でできる対処法や予防法

パニック発作が起きたら焦らず、落ち着くことが大切です。発作は一時的なもので、通常10分以内におさまります。また、発作自体で死んでしまうことはありません

まずは深呼吸で心を落ち着かせ無理をせず休息を取りましょう。

パニック発作が起きた時に落ち着かせるための呼吸法をご紹介します。[3]

  1. 椅子に座る、椅子にもたれかかる
  2. 息を止めて準備し、3秒かけて息を吐く
  3. 次に3秒かけて自然に息を吸う
  4. その後は「3秒かけて息を吐き、3秒かけて息を吸う」を1セットとし、1分間に10セット行う
  5. 発作が落ち着くまで(5分間程度)続ける

また、日常生活でできる予防法は以下の通りです。

  • 生活リズムを整え、規則正しく過ごす
  • 正しい服薬を継続する
  • 適度な運動を行う
  • ストレスをためない
  • お酒やコーヒーを控える

ストレスやカフェインの取り過ぎはパニック障害の悪化要因とされています。発作を起こさないためにも、日常生活を送る中で上記に注意して生活しましょう。

受診の目安

自分でできる対処法や予防法を実践しても、発作がなかなか治まらない場合は、受診を検討しましょう。

下記に、パニック障害が疑われる状態をまとめています。[3

  1. 予想できないパニック発作が繰り返しおこる
  2. 少なくとも1回の発作後に、次の3つの症状のうち1つ以上が1ヶ月以上続いている
    発作がさらに起こるのではないかという不安が続いている
    発作や発作後の結果(死んでしまう、気を失う、気が狂ってしまう)について心配してしまう
    行動に影響が出ている(発作を避ける、発作を抑えるために何かを実施する)

上記を参考に、発作が繰り返す、外出が怖い、仕事や家事に支障が出ている場合は受診を検討しましょう。

また受診に備えて症状の頻度やきっかけ、生活への影響などをメモしておくと、診断がスムーズに進みます。


まとめ:不安を一人で抱え込まず、早めの相談を

パニック障害は治療で改善する病気です。突然の不安や動悸が続くときは、我慢せずに専門医へ相談しましょう。

治療では丁寧にお話を伺い、その人にあった薬物療法と精神療法を行い、症状を緩和します。

「パニック障害かもしれない」と感じている方は、不安を我慢せず、まずは一度専門医に相談して、早めに適切な治療を受けましょう。


[1] 厚生労働省|こころもメンテしよう|不安障害

[2] 社会福祉法人恩賜財団済生会|広場恐怖症

[3] 厚生労働省|パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル

[4] 社会福祉法人恩賜財団済生会|パニック障害

[5]日本不安症学会|パニック症の診療ガイドライン