パニック障害

パニック発作で「息ができない」と感じるのはなぜ?過呼吸との関係や救急車を呼ぶ場面

「息が吸えない」「このまま死ぬかもしれない」と感じるほど苦しかったのに、あとから振り返ると過呼吸ではなかった。そんな経験をすると、「本当にパニック発作だったの?」「次にまた起きたらどうすればいい?」と不安になる方もいるでしょう。

パニック発作では過呼吸を伴うことがありますが、必ず起こるわけではありません。また、息苦しさの感じ方には、呼吸そのものの変化だけでなく、身体の変化への不安や恐怖が関係することもあります

この記事では、パニック発作と過呼吸の関係、なぜ「息ができない」と強く感じるのか、救急車を呼ぶか迷ったときの考え方までわかりやすく解説します。発作を経験したあとに「自分の症状は何だったのか」と迷っている方が、今後の対応を考える参考にしてください。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

パニック発作は、過呼吸がなくても起こる

パニック発作というと、激しく呼吸をする様子を思い浮かべる方もいるでしょう。

パニック発作では過呼吸を伴うことがありますが、すべての人に起こるわけではありません。

パニック発作では、呼吸の変化だけでなく、次のような症状が現れることがあります。

  • 心臓がドキドキする、脈が速くなる
  • 汗が出る
  •  体や手足が震える
  •  息がしにくい、息苦しく感じる
  •  のどが詰まるように感じる
  •  胸が痛い、胸に圧迫感や違和感がある
  • 吐き気がする、お腹に不快感がある

このように、動悸や胸の苦しさなどが強く現れ、呼吸がそれほど乱れない場合もあります

また、パニック発作と過呼吸は同じものではありません。過呼吸は、必要以上に速く、または深く呼吸している状態を指します。

パニック発作に伴って起こることはありますが、両者は分けて考える必要があるでしょう。


「息ができない、このまま死ぬかも」と感じるのはなぜ?

パニック発作では、「息が吸えない」「窒息するかもしれない」と強く感じることがあります。

こうした苦しさには、過呼吸による体の変化だけでなく、自分の呼吸や心拍への注意、身体の変化をどう受け取るかも関係しています

ここでは、過呼吸による体の変化や、呼吸・心拍への意識が、息苦しさや恐怖を強める仕組みを解説します。

過呼吸になると、息をしていても苦しく感じやすい

強い不安や緊張によって呼吸が速く、深くなると、必要以上に二酸化炭素が体の外へ排出されます。

血液中の二酸化炭素が減ることで、息苦しさやめまい、手足のしびれなどが現れることがあります。

息苦しいと「もっと息を吸わなければ」と感じ、さらに呼吸を繰り返してしまう人もいるでしょう。その結果、呼吸量が増えて二酸化炭素がさらに減り、苦しさが強まることもあります。

過呼吸でも紙袋を口に当てる方法は避ける

過呼吸への対処として、紙袋を口に当てて呼吸する方法を聞いたことがある方もいるでしょう。

しかし、紙袋を口に当てて呼吸する「ペーパーバッグ法」は、低酸素血症を招く危険があるため、現在は推奨されていません。過呼吸が起きたときも、自己判断で紙袋やビニール袋を使用するのは避けましょう。[1]


関連記事:パニック発作のすぐできる対処法3選!病院受診の目安も紹

 

救急車を呼ぶか迷うほど苦しいときはどうする?

パニック発作強い息苦しさや胸の痛みなどが現れることがあります。一方で、似た症状が心臓や肺などの病気によって起こることもあるため、すべてをパニック発作だと判断するのは避けましょう

ここではパニック発作で救急車を呼ぶか迷った時の目安をお伝えします。

「いつもの発作」と決めつけないほうがよい場合

過去にパニック発作を経験していても、次のような症状がある場合は「いつもの発作」と決めつけないようにしましょう。

  • 急に強い息切れや呼吸困難がある
  • 胸の中央を締め付けられる、または圧迫されるような痛みが続く
  • 意識がない、またはもうろうとしている
  • これまでの発作とは明らかに様子が違う

    このような症状がある場合は、119番通報をためらわないようにしましょう。判断に迷う場合は、救急相談窓口(#7119など)に相談する方法もあります。

    パニック発作でも息苦しさや胸の痛みは起こりますが、症状の強さや出方がいつもと明らかに違う場合は、心臓や肺など別の病気が関係している可能性もあるため注意が必要です。

    とくに、急な呼吸困難や強い胸部症状、意識の異常がある場合は、すぐに119番への連絡を検討してください。

    こちらの記事でも受診の目安をご紹介しています。ぜひご確認ください。

    関連記事:急に不安になる原因は?パニック障害の症状や受診の目安

    発作への不安で生活に支障が出ている場合は相談

    パニック発作そのものが治まっていても、発作への不安から日常生活に影響が出ている場合は、心療内科や精神科への相談を検討しましょう。

    たとえば、次のような状態です。

    • 電車やバスに乗れなくなった
    • 人混みや外出を避けるようになった
    • 一人で出かけることに強い不安を感じる
    • 発作が怖くて仕事や学校を休むことが増えた

    2025年の「パニック症の診療ガイドライン」でも、発作への持続的な心配や、発作を避けるための行動の変化がパニック症の特徴として示されています。[2]

    発作が起きている時間だけでなく、その後の不安によって生活が狭くなっていることも、受診時に伝えてみてください。


    発作のあとに「また起こるかも」と不安が続くことがある

    一度強いパニック発作を経験すると、「また起こるのでは」と不安が続くことがあります。

    そのため、「少し息が浅い気がする」「いつもより脈が速い」といった身体の変化が気になり、発作の前触れではないかと心配になる方もいるでしょう。

    このように、パニック発作を経験したあとに「また同じような発作が起こるのではないか」と不安が続く状態は「予期不安」と呼ばれます。[3


    パニック発作と過呼吸に関するよくある質問

    ここではパニック発作と過呼吸について、よくみられる質問と回答をまとめました。

    パニック発作の過呼吸に薬は効きますか?

    パニック症の治療では、症状や経過に応じて薬物療法が行われることがあります。ただし、「過呼吸だけを止める薬を飲めばよい」というわけではありません

    2025年の「パニック症の診療ガイドライン」では、薬物療法としてSSRIなどの抗うつ薬が推奨されています。[3]発作の頻度や予期不安、生活への影響なども踏まえて治療方針を決めるため、自己判断で薬を服用したり、量を増減したりするのは避けましょう

    過呼吸やパニック発作を繰り返している場合は、心療内科や精神科で相談してください。

    過呼吸を繰り返すとパニック症になりますか?

    過呼吸を繰り返したからといって、必ずパニック症になるわけではありません。過呼吸とパニック発作は関連することがありますが、同じものではなく、過呼吸がパニック発作の原因になると単純に考えることもできません

    過呼吸を何度も繰り返している場合は、パニック症だけでなく身体的な原因がないかも含めて、医療機関で相談するとよいでしょう。

     

    パニック発作は過呼吸の有無だけで判断しない

    パニック発作では過呼吸を伴うことがありますが、呼吸が大きく乱れないケースもあります。過呼吸があるかどうかだけで、自分の症状を判断する必要はありません。

    また、過呼吸を繰り返している場合も、すべてをパニック発作だと決めつけず、原因を確認する視点も検討してみましょう。

    「また発作が起きるかもしれない」という不安が続き、外出や仕事などに影響が出ている場合は、そのつらさも含めて心療内科や精神科で相談してみてください。


    参考
    [1]長崎大学保健センター|過換気症候群
    [2]日本神経精神薬理学会|パニック症診療ガイドライン第1.1版
    [3]厚生労働省|パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)