うつ病・うつ状態

うつ病で動悸が起こるのはなぜ?めまいや頭痛との関係と対処法

「動悸が続くけれど、うつ病と関係があるのだろうか」
「息苦しさやめまいもあり、何か別の病気ではないか」
このように不安に感じている方もいるでしょう。

うつ病では、気分の落ち込みや意欲の低下といった心の症状だけでなく、動悸や頭痛、めまいなど身体の不調が現れることもあります。

ただし、動悸はうつ病だけにみられる症状ではなく、パニック発作や身体の病気、薬の影響などが関係していることもあります。そのため、「うつ病だから」と自己判断せず、症状の現れ方やほかの不調にも目を向ける視点が必要です。

本記事では、うつ病で動悸がみられる理由をはじめ、めまいや頭痛との関係、似た症状との違い、動悸が強いときの対処法について解説します。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

うつ病で動悸が起こるのはなぜ?

うつ病は、意欲の低下や抑うつ気分といった心の症状だけでなく、動悸などのからだの症状を伴うこともある病気です。

うつ病では、心拍などを調整する自律神経の働きに変化がみられることがあります。実際に、複数の研究をまとめた分析では、うつ病のある人は健康な人と比べて心拍変動が低い傾向が示されていました。[1]

こうした研究結果から、うつ病では自律神経による心拍調整に変化がみられる可能性が示されています。また、動悸はうつ病でみられる身体症状の一つとして挙げられています。

動悸が続くと、「何か大きな病気ではないか」と不安が強くなる方もいるでしょう。不安や緊張が高まることで心拍をより意識し、動悸がつらく感じることもあります。

 

動悸のほかにめまいや頭痛などが現れることも

うつ病による体の症状では動悸のほかに、めまいや頭痛などを訴える方もいます。めまいといっても、必ずしも周囲がぐるぐる回る感覚とは限りません。足元が安定しない、目の前が暗くなるように感じるなど、うまく言葉にしにくい不調と捉える方もいます。

また、頭痛のなかでも、片頭痛とうつ病には関連があることが報告されています。これまでに行われた複数の研究をまとめて分析した結果では、片頭痛とうつ病には双方向の関連があることが示されていました。[2]

めまいや頭痛などの身体症状が続くと、仕事や家事に集中しにくくなったり、外出を控えるようになったりする方もいます。症状そのもののつらさに加えて、日常生活への影響が重なることで、心身の負担もさらに大きくなりかねません


うつ病の動悸と似た症状が現れることもある

うつ病では動悸がみられますが、似た症状はほかの精神疾患でも現れます。たとえばパニック発作では、突然の動悸に加えて、息苦しさやめまい、手の震えなどを伴うことも少なくありません。

そのため、動悸や息苦しさがあるからといって、すべてをうつ病による症状と考えることはできません。症状の現れ方や続く時間、ほかにどのような不調があるかによって、考えられる原因は異なります。とくに強い不安とともに突然症状が現れる場合は、うつ病とは異なる背景も考える必要があるでしょう。


動悸が酷い・止まらないときの対処法

ここでは、動悸が酷い場合や、止まらないときにできる対処法を紹介します。 不安や緊張が強いときの呼吸の整え方や、動悸を強める要因の見直し方、注意したい症状について順に確認していきましょう。

不安や緊張が強いときは呼吸を整える

不安や緊張が強くなると、呼吸が浅く速くなり、心臓の鼓動を強く感じることがあります。このようなときは、まず無理に動かず、ゆっくりと呼吸することを意識してみましょう。

厚生労働省では、不安や緊張が強いときのセルフケアとして腹式呼吸を紹介しています。[3]口からゆっくり息を吐いたあと、鼻からゆっくり吸うことを繰り返します。大きく息を吸うことよりも、焦らずゆっくり吐くことを意識するとよいでしょう。

動悸を強める要因がないか確認する

動悸は、精神状態だけでなく普段の生活習慣によって強く感じることもあります。たとえば、睡眠不足やストレスのほか、カフェインやアルコール、喫煙なども動悸の原因として挙げられています。

動悸を繰り返しているときは、症状が現れる前の行動を振り返ってみましょう。コーヒーやエナジードリンクを多く飲んでいないか、睡眠不足が続いていないかなどを確認すると、症状につながる要因を見つける手がかりになります。[4]

動悸を「うつ病の症状」と決めつけない

動悸にはさまざまな原因があり、ストレスや不安だけでなく、一部の薬や不整脈、甲状腺の病気などが関係することもあります。

そのため、うつ病と診断されている方でも、「いつもの症状だろう」と決めつけないようにしましょう。動悸が繰り返す、以前より強くなっているなど、変化がある場合にも注意が必要です。

また、動悸とともに突然の強い胸痛や呼吸困難、意識を失うなどの症状がある場合は、119番通報を含め、すぐに医療機関につながる必要があります。

 

うつ病と動悸に関するよくある質問

ここでは、うつ病と動悸について多くの方が疑問に感じやすい内容をQ&A形式で紹介します。 薬との関係や眠れないときの考え方、動悸だけでうつ病と判断できるのかについて見ていきましょう。

うつ病の薬で動悸が起こることはありますか?

一部の抗うつ薬では、副作用として動悸が記載されています。服用している薬の副作用は、薬の説明書やPMDAの「医療用医薬品情報検索」で確認できます。[5]

薬を飲み始めてから動悸が気になる場合でも、自己判断で中止・減量せず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。相談するときは、動悸が始まった時期や続く時間、服薬を始めた時期との関係などを伝えると、薬との関係を医師や薬剤師が確認する手がかりになります。

動悸がして眠れないのもうつ病と関係がありますか?

うつ病では、動悸と不眠のどちらも症状としてみられることがあります。ただし、動悸がして眠れないからといって、必ずしもうつ病が原因とは限りません。

不安や緊張が強いと心臓の鼓動が気になり、寝つきにくくなることもあります。また、うつ病では寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目が覚めるなど、さまざまな睡眠の変化がみられます。

眠れない状態が続いている方は、うつ病と不眠の関係についてもあわせて確認してみてください。詳しくは「うつ病による不眠が気になっている方へ|症状の特徴や受診の目安を解説」の記事で解説しています。

動悸があるだけでうつ病と判断できますか?

動悸があるだけで、うつ病と判断することはできません。うつ病では動悸が身体症状として現れることがありますが、動悸はストレスや不安、不整脈など、さまざまな原因でもみられます。

うつ病かどうかは、動悸だけでなく、気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠や食欲の変化など、ほかの症状も含めて判断します。気になる症状が続いている場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。


動悸が続くときは原因を決めつけずに向き合おう

うつ病では、自律神経の働きの変化などを背景に、動悸をはじめとした身体症状が現れることも少なくありません。めまいや頭痛などを伴う方もおり、身体の不調が日常生活へ影響することもあります。

一方で、動悸はパニック発作や不整脈、薬の副作用など、うつ病以外の原因でもみられます。「うつ病の症状だから」と決めつけず、動悸がいつ起こるのか、どのくらい続くのか、息苦しさやめまいなどを伴っていないかも確認しましょう。

動悸が続くことで不安が強くなったり、生活に支障が出たりしている場合は、一人で抱え込まず医療機関へ相談しましょう。

また、動悸だけでなく、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠なども続いている場合は、心と身体の両面から状態を整理するためにも、心療内科や精神科への相談を検討してみてください。


参考
[1]Wu Q, et al. Heart rate variability status at rest in adult depressed patients: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Public Health. 2023;11:1243213.
[2]Dresler T, et al. Understanding the nature of psychiatric comorbidity in migraine: a systematic review focused on interactions and treatment implications. J Headache Pain. 2019;20:51.
[3]厚生労働省 こころもメンテしよう|腹式呼吸をくりかえす
[4]NHS|Heart palpitations
[5]独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)|医療用医薬品 添付文書等情報検索