注意欠如・多動症(ADHD)

大人のADHD「不注意優勢型」とは?仕事や生活でみられる特徴と困りごとへの対策

「仕事で同じようなミスを繰り返してしまう」
「忘れ物が多く、予定や物の管理がうまくできない」

気をつけているつもりでもミスや忘れ物が続くと、「自分の努力が足りないのではないか」「周囲からだらしないと思われているのではないか」と悩むこともあるでしょう。仕事や家事に時間がかかり、失敗しないよう常に気を張ることで、心身の負担が大きくなる方もいます。

こうした困りごとから、「自分はADHDの不注意優勢型ではないか」と考えても、よくある忘れっぽさとの違いや、医療機関へ相談すべきか判断できず、迷っている方もいるかもしれません。

本記事では、大人のADHDにおける不注意優勢型の意味や、仕事・日常生活でみられやすい特徴を解説します。予定や作業を管理するための具体的な対策、医療機関へ相談する目安、受診前に整理しておきたいことも紹介します。

困りごとの背景を考え、自分に合った対処を見つけるための参考にしてください。

監修

尾西こころのクリニック
院長 河邊眞好

名古屋市立大学医学を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療・訪問診療等に従事。稲沢厚生病院部⾧を経て、現在は医療法人優真会尾西こころのクリニック院⾧として地域に密接した精神医療に尽力しています。

大人のADHDにおける「不注意優勢型」とは

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意と多動性・衝動性をおもな特徴とする神経発達症です。 

特徴 おもな内容
不注意 注意を持続したり、作業や予定を整理したりすることが難しい
多動性 身体を動かしたい感覚が強く、落ち着いて過ごすことが難しい
衝動性 考える前に行動してしまい、自分の行動を抑えることが難しい

 

ADHDは、どの症状が中心にみられるかによって、不注意が中心のタイプ、多動性・衝動性が中心のタイプ、両方がみられるタイプに分けられます。[1]

本記事では、不注意の特徴が中心にみられる状態を「不注意優勢型」と表記します。

ADHDの症状の現れ方には個人差があり、年齢とともに変化することも珍しくありません。子どもの頃に症状が軽かったり、家族や教師が気づかなかったりして、成人後に初めて診断される人もいます。成人期の生活や仕事で求められることが増えたことにより、困りごとが明らかになる人も多いです。

一方、忘れ物やミスが多いという理由だけでは、ADHDと判断できません。ストレスや睡眠の問題、不安、うつ病、身体疾患などによっても、ADHDに似た症状が現れる可能性があります。診断では、子どもの頃からの経過、複数の場面での特徴、仕事や生活への影響などを総合的に確認します。[1]


仕事や生活でみられやすい不注意の特徴

不注意による特徴が現れる場面は、仕事に限らず、家事や予定の管理などさまざまです。また、特徴の現れ方や困りごとの程度は一人ひとり異なります。

仕事でみられやすい特徴

仕事では、書類の記入漏れや入力間違いといったケアレスミスが続くことがあります。見直しをしていても確認箇所が抜け、同じようなミスを繰り返す場合もあるでしょう。

口頭で複数の指示を受けたときに、一部を聞き漏らしたり、作業している間に別の指示を忘れたりする場合もあります。話を聞く気がなくても、周囲の音や別の考えに注意が移り、指示に沿って作業を進めにくくなる方もいるでしょう。

ほかにも、必要な書類や道具をどこに置いたかわからなくなり、探すことに時間を取られる場合があります。


こうした困りごとが重なると、作業の遅れや負担の増加にもつながりかねません。

家庭や日常生活でみられやすい特徴

日常生活では、鍵や財布、スマートフォンなどを置いた場所がわからなくなったり、外出時に必要な物を忘れたりすることがあります。約束や予定を覚えていたつもりでも、別のことをしている間に忘れてしまう人もいるでしょう。

家事や片付けでは、一つの作業を終える前にほかのことが気になり、複数の作業が途中になる場合があります。部屋を片付けようとしても、どこから手をつけるか決められず、作業を先延ばしにすることも珍しくありません。


関連記事:大人のADHDとは?特徴やセルフチェック、治療法について解説


不注意による困りごとへの対策と相談の目安

不注意による困りごとには、記憶や注意力だけに頼らず、道具や環境を活用する方法があります。すべてを一度に取り入れるのではなく、自分が続けやすい方法から試してみましょう。

予定や情報を記録する

口頭で受けた指示や思いついた予定は、その場でメモに残します。持ち物にはチェックリスト、予定や締め切りにはカレンダーやリマインダーを使うなど、目的に応じて記録方法を決めておくと確認しやすくなるでしょう。

仕事の指示は、可能であれば文章でも確認しましょう。口頭で指示を受けた場合は、自分で要点を書き出し、認識が合っているか確認します。覚えておこうと努力するだけでなく、必要な情報を後から確認できる状態にすることを意識してみましょう。

作業を小さく分ける

「資料を完成させる」「部屋を片付ける」といった大きな目標は、「必要な資料を集める」「見出しを作る」「机の上のごみを捨てる」など、最初の行動がわかる大きさまで分けてみましょう。

長時間集中しようとせず、「最初の10分だけ取り組む」「今日は一つの場所だけ片付ける」と範囲を決める方法もあります。[1]途中で短い休憩を入れ、小さな作業ごとに完了を確認すると、進捗を把握しやすくなります。

作業を分けた後は、終わった項目に印をつけます。残っている作業を頭の中だけで管理せず、見える形にしておきましょう。

集中しやすい環境を整える

作業中に注意がそれやすい場合は、机の上に必要な物だけを置いたり、スマートフォンの通知を切ったりして、集中を妨げるものを減らしてみましょう。集中しやすい条件は人によって異なるため、作業が進めやすかった環境を記録し、自分に合う方法を探すことも検討してみましょう。


生活への支障が続く場合は医療機関へ相談する

さまざまな方法を試しても仕事や生活がうまく回らない、ミスや忘れ物によって職場や家庭での問題が増えている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。不安や気分の落ち込み、不眠などが続いている場合も相談の目安です。

受診は、ADHDの診断をつけるためだけのものではありません。困りごとの背景を確認し、自分に合った対策や支援を整理する機会にもなります。

受診を迷っている方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。


関連記事:大人のADHDで病院に行くべき?受診の目安と精神科・心療内科で相談できること


大人のADHD・不注意優勢型についてよくある質問

ここでは、大人のADHD・不注意優勢型についてよく聞かれる質問にお答えします。

不注意優勢型でも治療を受けられますか?

不注意が中心の場合でも、仕事や日常生活への支障が続いているときは、治療や支援について医療機関へ相談可能です。ADHDの治療には、薬物療法や心理療法、行動面への支援などがあり、症状や生活上の困りごとに応じて検討されます。

治療が必要か、どのような方法が適しているかは一人ひとり異なるため、医師と相談しながら考えることが大切です。

受診前に準備しておくとよいものはありますか?

現在困っていること、困りごとが起こりやすい場面、仕事や家庭への影響をメモしておくと、診察時に伝えやすくなります。子どもの頃の行動や学校生活について、覚えていることも整理しておきましょう。[1]

診察で必要となる情報や持ち物は医療機関によって異なるため、予約時に確認してください。

 

まとめ|不注意による困りごとを整理し、自分に合う対策を

大人のADHDで不注意が中心の場合、仕事上のミスや予定・持ち物の管理、家事の進め方などに困難が現れることがあります。不注意により仕事や家事に影響が出ている場合は、メモやリマインダーを活用する、作業を小さく分けるなど、困りごとに応じた方法を試すことも検討してみましょう。

ただし、忘れ物やミスが多いという理由だけで、ADHDとは判断できません。睡眠の問題や不安、うつ病、身体疾患などによっても、似た症状が現れる場合があります。

対策を取り入れても仕事や生活への影響が続く場合は、精神科や心療内科に相談することも選択肢の一つです。困っている場面や生活への影響を整理することは、自分に合う対策や支援を考えるきっかけにもなるでしょう。

不注意による悩みを一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。


参照

[1] National Institute of Mental Health, Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: What You Need to Know,Revised 2024.